「AIで稼げる」
「コード一行書かずに月100万」
——こういうタイトルを見ると、私はまず「何を指しているのか」を確認したくなる。AIでできることが広すぎて、逆に何から手をつければいいかわからない人も多いはずだ。
あなたはどうだろう。AIは「なんとなく触っている」段階? それとも「仕事や副業にどう結びつけるか」まで考えている段階?
私は後者に進むには、まずAIの役割分担を整理する必要があると思っている。そこから「怠惰に稼ぐ」という発想——つまり自分で手を動かさず、AIを指揮する立場に回る話——が見えてくる。
AIで何ができるか、まず地図を持つ
生成AIでできることの範囲は広すぎる。文章を書く、コードを書く、画像を作る、リサーチする、メールを送る——全部「できる」と言われると、何から始めればいいか迷う。
大雑把に分けるなら、事務方と労働方の2種類だ。
事務方は、ChatGPTやClaudeのようなチャット対話形式のツールだ。プロンプトで指示を出し、返ってきた結果をコピーして使う。コードを吐かせることはできるが、ファイルの保存や実装の続きは手動になる。画像や動画の生成も、結局は「指示を出す側」が事務仕事をしている。
労働方は、CursorやVSCode拡張のようなAI×IDEタイプだ。もともとコードを書くためのエディタなので、チャット指示からアプリ作成まで一気通貫で進めやすい。「PythonとTypeScript、どっちがいい?」と聞いてくれるのも、このタイプの強みだ。まあ、どんな言語でもある程度はできるんだけどね。
例:不便なアプリを自分で作る
たとえば、普段使っているアプリが不便だと感じたとき。「ワイならこういう機能をつけるのに」と思う場面はないだろうか。
その場合、Vibe Codingで作れる。やることは作りたいアプリの概要を伝えることだけだ。あとは段階的な実装方法をAIが教えてくれる。
ChatGPTにでも、こんな感じで伝わる。
「このアプリが不便でむかつくから新しく作ってやろうと思う。機能性はこんなんで、こういった操作性にしたい。君にできんの?」
返事が来たら、「要件定義を作成して」→ 実装タスクを切る → ファイルを段階的に作っていく、という流れになる。コードが書けるかどうかより、何を作りたいかを言語化できるかの方が先に来るわけだ。
「怠惰に稼ぐ」とは、DoerからDirectorへ
Dan Martellの動画「Laziest Way to Make Money With AI (Zero Code)」で語られている核心は、ツールの名前ではない。自分で作業する人(Doer)から、AIに指示を出す人(Director)へ立場を変えるという話だ。
AIを「優秀なインターン」と捉える。インターンに細かい作業を任せ、自分は判断と指示に集中する。コードを書かなくていい、というのは「手を動かさない」という意味であって、何もしないという意味ではない。
もうひとつ大事なマインドセットがある。ツールから離れないことだ。AIの結果をコピペして別の場所に持っていくのではなく、AIツール内(あるいは連携したワークフロー内)で完結させる。リード獲得から営業、納品までを一つの流れとして組む——それが「怠惰」の正体だ。
動画ではManis AIというエージェント型ツールを例にしているが、考え方は汎用的だ。ChatGPTのカスタムGPT、Claude Projects、n8nやMakeの自動化、Cursorでの開発——媒体は違っても、Directorとして指示を出し続ける構造は同じだ。
ビジネスを回す5つのステップ
Martellが示すフレームワークを、私なりに整理するとこうなる。
1. 惹きつける(Attract)——寝ている間にリードリストを作る
理想の顧客像をAIに伝え、条件に合う企業を自動でリサーチさせる。
動画の例では、InstagramやFacebookで活動的な健康・ウェルネス系Eコマースブランド50社を特定し、ウェブサイトやSNS、推定収益などをスプレッドシートに抽出している。人間が1社ずつ調べていたら何日もかかる作業を、AIエージェントに任せる。
ポイントは「誰に届けたいか」を先に言語化しておくことだ。ターゲットがぼんやりしていると、リストの精度も落ちる。
2. 変換する(Convert)——パーソナライズされた営業
抽出したリストに対し、AIで一人ひとりに合わせたメールやSNSメッセージを自動作成する。
単なるテンプレートではなく、相手の最新の投稿内容に触れるなど、「この人向けに書いた」と感じられる文面をAIに書かせるのが肝だ。
返信があった場合にのみ自分に通知が来るよう設定し、関心のある顧客だけに対応する——ここで初めて人間が動く。全部に返信する必要はない。
3. 納品する(Deliver)——AIに実作業をさせる
リサーチやレポート作成などの実務もAIに任せる。
動画では、特定企業の過去6ヶ月の広告キャンペーンを分析し、エンゲージメントの高いパターンを特定する作業をAIが数分で行っている。人間なら数週間かかる類の仕事だ。
さらに、その分析結果を相手企業のブランドカラーに合わせたプレゼン資料や専用ウェブサイトとして自動生成する。Directorの仕事は「何を納品物にするか」を決めることで、中身の叩き台はAIが作る。
4. すべてを自動化する(Automate)——スケールアップ
繰り返しのタスク、スケジューリング、問い合わせ対応などをAIエージェントに統合する。
一人でも、大きな組織のようなアウトプットが可能になる——というのが売り文句だが、半分は本当だと思う。ただし、最初から全部を自動化しようとすると破綻しやすい。Attract → Convert → Deliverのどこか1つを先に回して、うまくいくパターンが見えてから広げる方が現実的だ。
5. 差別化する(Differentiate)——人間にしかできないこと
AIが何でもできる時代に、人間が磨くべきはテイスト(審美眼)、ビジョン(先見性)、ケア(人間的な配慮)の3点だ。
AIは多くの案を出せる。でも、どれが「良いもの」かを判断するのは人間のテイストだ。ビジネスは結局H to H(Human to Human)だ。AIで浮いた時間を、人間関係の構築やスキルの向上に充てる——ここが成功の鍵になる。
AIで効率よく勉強する——Directorの練習場
「稼ぐ」話と「勉強する」話は、一見別物に見える。でも私は同じ構造だと思っている。学習も、AIに丸投げすれば効率は上がらない。自分がDirectorになって、学習ループを設計する必要がある。
AIを使った学習方法は、まだ大手にも手入れされていない。手法が確立されていないからだ。だからこそ、今のうちに自分なりの型を作っておく価値がある。
学習ループの4要素
私が意識しているのは、次の4つだ。
1. ゴールと期限を先に決める。「なんとなく資格を取りたい」ではAIも手が出せない。「3ヶ月後の試験に向けて、週10時間でこの範囲を終わらせたい」まで落とす。
2. AIに教材を「生成」させる。教科書の要約、穴埋め問題、選択式クイズ、過去問風の演習——これらはGCAO(Goal・Context・Action・Output Format)で指示を出せば、かなりの精度で作れる。毎回ゼロから聞くのではなく、プロンプトの型を保存して再利用するのが効く。
3. 答え合わせはAIに「採点役」をやらせる。自分の回答を貼り付けて、「どこが間違っているか」「なぜ間違いか」「正解の考え方は何か」をフィードバックさせる。人間の先生に毎回聞くより、回数を増やせるのがメリットだ。
4. リマインダーで間隔を空ける。学習効果は「一度読んだ」では定着しない。間隔反復が必要になる。カレンダーやタスクアプリにリマインダーを設定し、「今日はこの章の復習」「今日はこのクイズを解く」とAIが作った教材を再投入する——このアプリ的な役割(スケジュール管理)は、人間が設計する部分だ。
勉強と稼ぐは、同じスキルを鍛える
リスキリングの文脈で言えば、AIで学ぶことは「AIを使って成果を出す」練習そのものだ。
事務方のチャットで要約とクイズを作り、労働方のIDEで学習用の小さなアプリをVibe Codingする——どちらもDirectorの訓練になる。勉強の成果物が、そのまま副業や本業の武器になることもある。
手法が確立されていない今だからこそ、自分でループを回して型を作る側に回った方が、あとから楽になるはずだ。
まとめ:指揮する側に回れ
AIで稼ぐ最も怠惰な方法は、コードを書かないことではない。自分で手を動かすDoerから、AIを指揮するDirectorに回ることだ。
その前に、AIで何ができるかの地図——事務方と労働方——を持っておくと迷いにくい。惹きつける、変換する、納品する、自動化する、差別化する——この5ステップはビジネスの話だが、学習にもそのまま転用できる。
勉強も稼ぐも、結局は同じだ。AIに何をさせるかを決める人間の仕事が残る。テイストとビジョンとケア——そこを磨く時間を、AIが浮かせてくれる。
参考動画:Laziest Way to Make Money With AI (Zero Code)(Dan Martell)